レーベル:コバルト文庫
著者:今野 緒雪
イラストレーター:ひびき 玲音
発売年月日:1998年4月~
あらすじ
超お嬢さまたちが集う「リリアン女学園」。清く正しい学園の伝統を受けつぐために、先輩の「お姉さま」が後輩の「妹」を指導するという制度があって…。乙女たちのちょっと過激な学園コメディ!
解説
姉妹制度をった伝統あるお嬢様学校「リリアン女学園」
その生徒会である「山百合会」の面々を中心においた学園ものです。
「マリみて」の愛称で呼ばれる本作は百合系の草分け的存在で
四度のアニメ化を果たすなど男性女性問わず多くの人から支持されていて今でもファンが多い作品です。
ちなみにレズと百合との違いについてですが
レズが女性同士の性愛のみを指す言葉として使われる一方
百合は恋愛や性愛のみを指すものではなく、姉妹愛や友情といった様々な関係性を指します。
要するに
ステレオタイプな恋愛関係に囚われず、キャラクターや作家の個性を活かした人間模様が描かれていることこそが百合系作品の魅力
と言っても良いでしょう。
そしてこのマリみては百合系の持つ魅力が全て詰まった原点にして頂点とも呼べる作品です。
一巻の刊行が1998年と大変古い作品ですが、直近の百合系作品にはまった人が本作を手に取ることも多く
今後もファンの間で語り継がれていくことは間違いありません。
感想
日常の中で起きる些細な変化が大心を大きく揺さぶられるほどの大事件になってしまう
そんな十代の女の子でしか描けない物語が瑞々しく描かれています。
一瞬の輝きを閉じ込めて宝石にしたような作品だと感じました。
また、キャラクターに関心を持たせる技量が非常に長けていて
話の展開がベタすぎて先が予想できるのに夢中で読んでしまうなんて場面がたくさんありました。
特に主人公である福沢祐巳(ふくざわゆみ)のキャラクター性は秀逸だと感じました。
大ヒットした漫画、鬼滅の刃の主人公竈門炭治郎のように共感や自己投影ではなく応援したくなる主人公なんですよ。
男性や年配の方の視点から見ると、少女たちの葛藤や悩みというの大した問題でもないように見えるんですが
祐巳ちゃんを応援したい気持ちがそうした壁を壊して、読者を物語にのめり込ませてくれます。
私自身「大人になった自分が今更読んでも楽しめるかな?」と不安でしたが
その杞憂が嘘みたいにド嵌まりしてしまいました。