レーベル:富士見ファンタジア文庫
著者:雨木シュウスケ
イラストレーター:凪良
発売年月日:2017年4月
あらすじ
大人気VRMMORPGにて伝説的プレイヤーだった少年は信じていた少女からチートを疑われ、全てを失った。仲間だった少女からの裏切り。真実を確かめるため、少年は人の身を捨て、リザードマンとして舞い戻る!
葛藤を抱えて思うように動けないキャラクター達
本作品の……と言うか雨木シュウスケ先生が書く作品の最大の魅力はこれに尽きると私は思います。
例えば主人公レウスはあらすじにも書かれてある通りヒロインから裏切られた過去があり、そんな彼女に対して彼は恨みに近い感情を抱く反面、ギルドで孤立している彼女の行く末を案じるという複雑な胸の内を見せてくれますし
対するヒロインも、ただの裏切り者ではなく、レウスへの憧れと疑念の間で揺れ動いた結果、裏切ってしまったことを後悔し続けているという設定でライトノベルの中でも心情描写に重きを置いた作風になっています。
こういう『自分の本心に素直になれば一気に物事が動くけど中々一歩踏み出せない状況』って10代の読者がめちゃくちゃ共感できるシチュエーションだと感じたのは私だけでしょうか?
今10代の読者にも、そしてかつて10代だった読者にも是非彼等の成長物語を読んでみて欲しいです。
主人公がちゃんと魅力的なのは良作の証
主人公がしっかり活躍する作品が好きな人は本作品を気に入るのでは無いでしょうか。
まず、主人公のレウスが作中通して一貫した目的を持っているのが良かったですね。ストーリーもブレずに進んでいくので読んでて中弛みすることもなく最後まで一気に読み終える事が出来ました。
また、彼の強さへの拘りがキャラクターの個性であると同時に物語を動かすアクセントとして機能しており、作品通して主人公がずっと活き活きとして見えるんですよね。
鋼殻のレギオスの主人公レイフォンもそうだったけど『訳あって弱体化された最強主人公が経験を武器に困難を乗り越える』というのが作者の得意なフォーマットなのかもしれないですね。
作者が活き活きと主人公を動かしてるように感じました。
作者の代表作、鋼殻のレギオスと比較して
雨木シュウスケ先生の代表作『鋼殻のレギオス』もめちゃくちゃ面白い作品だったのですが、個人的には本作の方がオススメ出来る作品になっていると感じました。
鋼殻のレギオスは複雑なキャラクター心理に加えて世界観もかなり独創的で、作品として際立った個性がある反面、情報量が多く読みにくいと感じることも多々ありました。
しかし『クラウン・オブ・リザードマン』は、SAO(ソードアート・オンライン)ライクな仮想現実を舞台にしており、直感的に理解しやすい世界観になっています。
その分キャラクターの感情の機微がより際立ち、とても読みやすい印象でした。
総評
めちゃくちゃ良い作品だと思います。
作家の個性が前面に出ている上で、ライトノベルとして取っつきやすいフォーマットに収まっている。
SAOライクの作品の中でもかなり完成度の高い作品では無いでしょうか。
登場人物の精神的な成長と激しい戦闘シーンが相まって、物語の終盤がちゃんとクライマックスとして盛り上がっていたのも好印象です。
ライトノベルを読んでいて久々にカタルシスを感じることが出来ます。
続巻があるみたいなのですが、続きが気になるというよりは1冊ラノベとしての満足度が高くまた読みたいなと思える作品でした。
本作品が特にオススメな人
☑️SAOライクの作品を食わず嫌いしてまだ読んでない人
☑️キャラクターの感情描写が丁寧な作品が好きな人
もしこの作品が気になったら、是非一度手に取ってみて下さい