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【映画レビュー】SISU シス 不死身の男

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 ダイ・ハードやコマンドー、そして近年ではジョン・ウィックやRRR──。
時代が変わっても、最強の主人公が悪党をなぎ倒すアクション映画は、いつの世も観客の心を熱くしてきました。
 今回紹介するのは、そんなアクション映画界に新たな伝説を刻むことになった作品。
 使い古されたツルハシと死中に活を見出す不屈の精神を武器に、常人では到底耐えられない苦境を、狂気すら感じる執念で突破していく男。
それが、北欧の荒野から現れた“死なない男”──『SISU/シス 不死身の男』です。



公開年:2023年

  • 監督:ヤルマリ・ヘランダー
  • 主演:ヨルマ・トンミラ
  • 上映時間:91分
  • ジャンル:戦争アクション/バイオレンス

あらすじ

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1944年、ソ連に侵攻されナチスドイツに国土を焼き尽くされたフィンランド。老兵アアタミ・コルピは掘り当てた金塊を隠し持ち、愛犬ウッコとともに凍てつく荒野を旅していた。やがて彼はブルーノ・ヘルドルフ中尉率いるナチスの戦車隊に遭遇し金塊と命を狙われるが、実はアアタミはかつて精鋭部隊の一員として名を馳せた伝説の兵士だった。アアタミは使い古したツルハシ1本と不屈の精神を武器に、次々と敵を血祭りにあげていく。
引用:SISU シス 不死身の男 : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com


作品の魅力①:乾いた暴力が語る“非情”と“執念”

 本作の暴力描写は、ハリウッドのような派手な演出やインド映画のようなエンタメ性とは一線を画しており、徹底して乾いた暴力が描かれています。
 血が流れても、叫びが響いても、感情の爆発はなく、ただ淡々と、冷徹に、命が散っていく。

 この乾ききった暴力の世界を作り上げているのが、誰あろう主人公アアタミです。
 彼には「守るべき家族」も「語るべき信念」もない。
 正義の為に戦うのではなく、手に入れた金塊を守る為に荒野を進み、邪魔する者を排除する。
 そこにあるのは、正義の為の戦いではなく生存本能と執念のがもたらす闘争です。

 いや本当に最高でしたよ。
 今の時代でこんな映画が見れるとは……。

 演出面での話を少しすると、映像そのものグロさと言うよりはその見せ方がとにかく秀逸で、色んな映画を見てきた私でも引いてしまうほどパンチがありました。
 なので暴力描写に耐性が無い人は絶対に見ない方が良いですし、慣れてる人であってもフィクションをフィクションとして楽しめる余裕がある時に見るのをお勧めします。

 

作品の魅力②:“最強”ではなく“生き残る”強さ

 本作の主人公、アアタミは、決して“最強の男”ではありません。
 彼はシュワちゃん演じる数々の主人公のように無数の敵をなぎ倒すわけでも、ジョン・ウィックのように華麗な殺陣を披露するわけでもない。
 むしろ、何度も追い詰められ絶体絶命の状況に陥ります。
 しかしそれでも彼は、驚異的な粘りで生き残る。何度でも、どんなに傷ついても。

 映画のタイトルにもなっている「SISU(シス)」とは、フィンランドの言葉で、すべての希望が失われたときに現れるという、不屈の精神のような意味合いを持っています。
 それはドイツやソ連と言った大国の侵略を跳ね除けたフィンランドという国そのものを象徴する言葉であり、本作のテーマそのものでもあります。
 こうしたテーマを映像でしっかり表現出来ているというのも本作の優れたポイントです。
 この作品を見ればSISUという言葉が何を意味しているか理解できる筈です。

作品の魅力③ 魅力的な悪役

 アアタミの不屈の精神を描く為には、彼を追い詰めるナチス部隊が本物の脅威として描かれる必要があります。
 そう言った意味ではブルーノ・ヘルドルフ中尉を演じたアクセル・ヘニーの存在感は、まさにもう一人の主役と言っても過言では無いでしょう。

 ヘニーは『オデッセイ』などでも知られる実力派俳優で、本作では冷酷さと狂気を絶妙にブレンドした演技を披露してくれます。
 彼の演じるブルーノはただのならず者なんかではありません。

 冷静に状況を分析し罠を仕掛ける知略を持ち、部下に対しても容赦なく、目的のためなら何でも犠牲にする非道さを兼ね備え それでいて、アアタミに対する執着が徐々に狂気へと変わっていく人間臭さがあります。
 
 彼がいるこそアアタミの異常性が際立ち、その異常性に彼自身も狂わされていく様が本作を単純なバイオレンスアクション以上の作品に昇華してます。
 本作を観る際には、是非狂気と暴力の狭間の中にある人間ドラマに注目してみて欲しいです。

まとめ 死なない男の生きる覚悟

 『SISU/シス 不死身の男』はただの痛快アクションではありません。
 乾いた暴力の中に宿る静かな狂気と執念──まさに「SISU」という言葉が意味する不屈の精神そのものです。

 もしあなたが、華麗なアクションや爽快な勝利ではなく、 “生”にしがみつく者の物語に惹かれるなら── この映画はきっとあなたの中に何かを残してくれるはずです。



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