はじめに
本記事は、アニメ、アイドルマスターシャイニーカラーズ先行上映版のネタバレが含まれています。
①シャニマスらしい透明感のある映像美
正直な話、演出面は今ひとつでした。
1人ずつ顔のアップを順番に映す場面なんかには「くどいな……」と感じることもしばしば。
ですが、全体としては驚くほど惹き込まれる映像美でした。
ただ綺麗ってだけじゃなくて、シャニマスらしい空気感がちゃんと表現出来ていたのが印象でした。
何気ない会話シーン1つとっても絵になってるんですよ。
だからこそ演出がノイズになってしまったのもあるので、そこは勿体なかったですね。
②日常の積み重ねが物語へと変わっていくリアリティ
ストーリー全体の感想としては、完成したパズルをあえてバラしたようシナリオで、まるで本当に価値があるのは完成した絵ではなくピースの方だと言わんばかりの印象を覚えました。
盛り上がりに欠けたメリハリの無いストーリーだという批判も散見されますが、まさにそれこそがシャニアニが描こうとしたリアリティなのでは無いでしょうか。
僕達にとってシャニマスはエンタメであり、非日常です。
しかし283プロのアイドル達にとって劇中の出来事は全て彼女達の日常の延長線上にあって、それは芸能界の仕事であっても例外ではありません。
よく1年があっという間に過ぎていくなんて言いますが、そこにどれだけの物語を見いだせるでしょうか。
1日1日を意識して過ごさないと、僕たちは自分の人生すら見失ってしまいかねません。
だから大事なのは分かりやすく完成した物語より、パズルのピースなのだと言われたら、なるほどと頷くしかありません。
それにアイドル達の一瞬の輝きを拾い集めて自分だけの物語を紡ぐ、それこそがアーケード版から続くアイドルマスターの醍醐味とも言えるでしょう。
単調で起伏が無いことに対して批判的な意見が出てくることも分かります。
ですが、僕としては物語全体を通してかなり見応えがあり、考えさせるものが満足いく内容でした。
③自然体を意識したキャラクターの個性の引き出し方
物語全体がパズルのピースを並べたような構成のため、登場人物のバックボーンに関してはかなり説明不足でした。
かと言って、本作がシャニマスのアイドル達を知っている前提で作られてるというわけでもありませんでした。
例えるなら、テレビをつけたら知らないアイドルが映ってたといった質感。この辺りもかなり生々しいんですよね。
その上で、アイドル1人1人の個性はしっかり引き出せていたのでは無いでしょうか。
それもキャラ付けされた個性ではなく、中々表には出ない自然体な姿が印象的でした。
アニメというよりドキュメンタリーみたいだったという感想が多かったですが、それもこうした描き方に依るところが大きかったと思います。
④賛否別れるフィルムスコアリングについて
本作品は映像に合わせて音楽をつけていくフィルムスコアリングという手法を使ってBGMが作られています。
SNSでの反響を見る限りここもかなり賛否分かれてるみたいですね。というか否が多い。
フィルムスコアリングはその特性上音楽が映像に引っ張られやすいんですよね。
なので、物語の抑揚をあえてつけないように作られたシャニアニだと、どうしても似た印象を与えてワンパターンな印象を与えてしまう。
それは否定出来ません。
ただ良い面も勿論あって、それは感情表現に長けているということです。
その場面の登場人物の繊細な心理描写を音楽で表現できる。
なので漠然とそのシーンを見るのではなく、キャラクターにフォーカスした時に印象ガラッと変わります。
台詞や映像による説明を可能な限り省いてるシャニアニにおいて、フィルムスコアリングは欠かせない要素だったのでは無いでしょうか。
ちなみにフィルムスコアリングを用いたメジャーな作品では以下の作品があります。
鬼滅の刃無限列車編こちらはテレビ放送版にて追加されたシーンのBGMにフィルムスコアリングが用いられてます。ここでもより深い心理描写に力が入れられてますので、是非劇場版との違いを楽しんでみて欲しいです。 葬送のフリーレン
金曜ロードショーで初回2時間スペシャルが放送されたことで話題になったアニメですが、その2時間スペシャルにおけるBGMは全てフィルムスコアリングです。
news.yahoo.co.jp
これらの作品も見ていくと、シャニアニの見え方も変わっていくかもしれませんね。
⑤2話通して再現された1stライブ
11話、12話は2019年3月9日と10日に開催された【THE IDOLM@STER SHINY COLORS 1stLIVE FLY TO THE SHINY SKY】を準えたものになっていました。
これが本当に凄かった。
アニメでMCをフル尺でやるなんて初めて見たし、舞台裏での衣装替えやメイク直しにフォーカスしていたのも新鮮だった。
この辺りもとてもドキュメンタリーチックでしたね。
勿論ライブのパフォーマンスもクオリティ高かった。
だけどやっぱり見てて惹き込まれるのはアイドルとしてパフォーマンスしている姿よりも年相応の少女として自然体な表情を見せている時だったので、どうやら僕はシャニマスにガッチリと心を掴まれてしまったようです。
アイドルではなく、アイドルをやっている少女達を描く。
これこそシャニマスが追求する実在性なのかもしれません。
⑥難しい作風に真っ向から挑んだキャスト陣
ここまで読み勧めたら、未視聴の方でも本作が如何に実験的な作品だったかが良く分かることでしょう。
アイドルを演じた声優さんにとってもかなり難しい作品だったと思いますが、演技面に関しては文句無しの出来で、映像演出やBGMと違って違和感を覚える部分が1つも無かった。
これに関しては凄いの1言です。
⑦総評「考えるな、感じろ」
個人的には、とても面白い体験が出来たというのが率直な感想です。
良く分からないものを
良く分からないまま受け止めて
理解することのないまま消化していく。
「あぁ、赦された」
そう思いました。
分からないことがあっても良い
この感情を言葉に出来なくても良い
ただ感じたものを感じたまま持ち帰って良い
そう感じました。
気になってる人は4月からのテレビ放送を是非見て欲しいです。
ここにしかない映像体験があります!
それだけは自信をもって言えます。
アイドルマスターシャイニーカラーズ、是非良かったらご視聴いただけると嬉しいです。