2023年1月31日よりアイドルマスターミリオンライブシアターデイズで始まったキャスティング投票企画「ミリオンキャスティング」が3月31日23時59分幕を閉じた。
これは松田亜利沙陣営と行動をともにした私、ルミィが見た松田亜利沙陣営の戦いの記録である。
3月14日20時 謎の発光現象を確認。
3月11日15時より開始されたミリオンキャスティング第二回投票、テーマは「悪役?令嬢」
戦いは第一回投票時からこの第二回投票を主戦場と定めた陣営による苛烈なスタートダッシュによって幕を開けた。
その後二日間は私が観測した範囲で特に大きな動きは無かった。
最初に各陣営が大きな動きを見せたのは3月14日。
ホワイトデーにあやかった企画を打ち、自分の担当アイドルが如何に悪役令嬢ものを演じるに値するかをアピールする絶好の機会というわけだ。
我那覇響陣営と僅差で競り続け、目まぐるしく順位を入れ替えていた松田亜利沙陣営はここで奇策に打って出る。
なんと20時になった瞬間に、一斉に七色に光りだしたのだ。
具体的に何が起きたかというと、松田亜利沙陣営が一斉にTwitterのアイコンを虹色に光る担当アイドルに変更したのだ。
気になる人はTwitterにて
「since:2023-03-13 until:2023-03-15 ゲーミング亜利沙」 で検索してみて欲しい。
松田亜利沙が七色に光る設定自体は2022年10月にミリシタで行われた魔法学園を題材にしたイベントで出てきたものではあるのだが
唐突に光りだした松田亜利沙担当Pに、多くの同僚達は驚きと困惑を隠しきれなかった。
何より特筆すべきは20時に始まったこの怪現象が21時になった途端示し合わせたかのようにピタリと収まったことだ。
統制のとれた奇行ほど恐ろしいものは無い。
だが、私は別の意味で震えが止まらなかった。
何故なら私はこの発光現象が意味するところを既に知っていたからだ。
真実を語るには、魏晋南北朝時代の中国まで時を遡らなければならない。
樹上開花
樹上開花、という言葉をあなたは知っているだろうか?
これは南朝宋の将軍檀道済(たん どうせい)が『兵法三十六計』に記した戦術の1つ。
「樹上に花を開(さか)す。」という言葉のとおり、小兵力を大兵力に見せかけて敵を欺く計略である。
最も有名な事例は紀元前3世紀の頃。
燕の大軍に包囲された斉の田単が少ない兵力を補うため、
1000頭あまりの牛を極彩色に塗装した上で、その尾にたいまつを縛りつけて敵陣に突進させたのだ。
これに燕の軍勢は大混乱。
斉軍は見事寡兵で燕の大軍を退けた。
お分かりいただけただろうか?
つまり松田亜利沙陣営は自らを極彩色の暴れ牛と化することによって、あたかも松田亜利沙がたくさんの担当プロデューサーを抱える大人気アイドルかのように見せかけたのだ!!
この戦術を考え付く知謀と、それを実際にやってのける胆力。
私は内情までは詳しく知らないが、恐らく兵法に精通した者かいたのだろう。
3月20日 ラーメンを食べる。
松田亜利沙陣営が次に大きな動きを見せたのは、3月20日土曜日。
この3月20日と明くる3月21日は多くの陣営が一斉投票を仕掛けていた。
票が大量に動く様を見せつけ、流れを一気に持っていこうというのだ。
そんな一斉投票のタイミングで松田亜利沙陣営は、
一 斉 に ラ ー メ ン を 食 べ 始 め た。
あろうことか担当アイドルそっちのけで、ラーメンの写真をアップし各々がイチオシのラーメンをプレゼンしだしたのだ。
気になる人はTwitterにて
「since:2023-03-20 until:2023-03-21 松田フ王」 で検索してみて欲しい。
日清が販売しているカップラーメン「ラ王」と松田亜利沙がよく発する奇声「ふおおお」とを掛け合せた企画なのだろうが、ドンモモタロウでもこのような縁の結び方はしない。
一見すると完全な悪ノリだ。
だが、果たして本当にそうだろうか?
私はカップヌードルを啜りながら、ある言葉を思い出していた。
ローマは兵站によって勝つ
これはカリグラ、クラウディウス、ネロと3人の皇帝に仕えたローマ帝国の軍人グナエウス・ドミティウス・コルブロが残した言葉だ。
地中海の覇者として1000年を越える栄華を築き上げた古代ローマ帝国。
その強さの秘訣は兵站(へいたん)の確保を最重要視したことにある。
「兵站」とは、軍隊が作戦行動を行うために必要な物資を調達・運搬・供給するための体制を指す。
弾薬、燃料、医薬品、人員そして食料など、
戦闘に必要なあらゆる資源を適切な時期に適切な場所に供給することは軍隊の戦闘力を維持するために不可欠だ。
また、兵站の維持にはそれに伴う施設の建設も欠かせないのだが、
ローマ軍はその点でも非常に高い技術を持っていた。
道路や水道といったインフラから病院、果ては温泉やコロッセオなどの娯楽施設まで作ったというのだから驚きだ。
こうして出来た植民市は現在でもヨーロッパの主要都市としてその面影をのこしている。
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松田亜利沙陣営の一斉投票は3月21日。
その前日である3月20日にこれみよがしにラーメンを食べたのは、まさにこの兵站の面で如何に自分達が優れているかを誇示する狙いがあったのだ。
実際多くのプロデューサーはこう感じた筈だ。
「例え一斉投票が奮わなくても、松田亜利沙陣営にはすぐに次の作戦に移れるだけの体力がある」と。
これはライバル陣営の心を折るには十分すぎる一手だ。
私は内情まで詳しく知らないが、松田亜利沙陣営にローマ史研究の第一人者がいたであろうことは想像に難くない。
3月25日 ダサパワポ選手権開幕
ミリオンキャスティング期間中、松田亜利沙陣営が見せた取り組みの中で最大規模のものがこのダサパワポ選手権だ。
3月25日はミリオンキャスティングも佳境を迎えた時期である。
最終日の一斉投票を見据えほぼ全ての陣営が持てる力の全てを出し、クオリティの高いイラストやプレゼン画像を用意していた。
しかしそんな中、松田亜利沙のプロデューサー達はクソダサいパワーポイントによるプレゼン合戦を仕掛けたのだ。
クソダサパワポ選手権が他の企画と一線を画していたのは、絵を描くことに自信がない人を始め、表現方法を持たないプロデューサー達が気軽に参加できた点だ。
また、「クソダサい」がテーマであるため完璧さを求められることがない。
この自由さが多くのプロデューサーの創造性を引き出したのか、亜利沙陣営以外も続々参戦。
挙句の果てにはお隣のシンデレラガール総選挙においてもクソダサパワポが使われるなど、異例の広まりを見せた。
その要因の1つとして挙げられるのは、フリー素材の配布だ。
彼等が配布したこの素材を見たときに、第二次世界大戦下のアメリカが開発したある銃が私の脳裏を過ぎった。
リベレーター
それは第二次世界大戦中、ドイツ軍に抵抗するレジスタンスを支援するために
アメリカ軍が計画、開発、製造を行なった急造拳銃だ。
この銃は銃身にライフリングもされておらず、弾も一発しか込められないお粗末さながら、僅か3ヶ月で100万丁の生産を可能にする驚異的な生産性を誇った。
リベレーターは抵抗運動の闘士らが小銃や短機関銃を奪う為に用いられることを想定しており、フランスを始めナチスドイツに占領された地域に投下する計画も立案されていた。
この計画は最終的に廃案となり、大量生産されたリベレーターの殆どが廃棄の憂き目に合うのだが、
戦う意志を持つ者の為に安価で使いやすい武器を大量に配る、という思想は決して的外れなものではない。
すぐに使える素材を配布し、多くのプロデューサーをクソダサパワポ選手権に駆り立てた松田亜利沙陣営のやり方はまさにこのリベレーターの設計思想に通じるものがある。
重ね重ね言うが、私は内情まで詳しくは知らない。
だが、松田亜利沙陣営に第二次世界大戦におけるナチスドイツへの抵抗活動と、それを支援した連合国の取り組みについて深い造詣を持った人物がいたことは間違いないだろう。
まとめ
さて、ここまで読んだあなたはこう思った筈だ。
松田亜利沙陣営は古今東西の戦史に精通し、
必勝の戦術を積み重ねて、王子役を射止めたのだと。
だが、そうではない。
彼等は選挙期間、毎日のように誰かが大なり小なり企画を仕掛けていた。
私が取り上げたのはその中のほんの一部に過ぎない。
功を奏した作戦は全体のうち3割あるか無いかと言ったところだ。
何が言いたいかと言うと、プロデュースにおいて求められるのは質より量。
圧倒的な行動力こそが、内輪だけの盛り上がりという状況を
打破しうるのでは無いだろうか。
奇しくもこの記事を仕上げてる数日前、
#GWはミリシタを始めよう というタグで
多くのプロデューサーがミリオンライブの宣伝を行っていた。
公式ではなくプロデューサーが始めたタグながらトレンド入りを果たすなど、
多くの企業が戦略的にトレンドを取りに行く中大健闘を果たした。
これも、多くのプロデューサーが参加することで圧倒的な行動量を生み出したからだ。
やはりプロデュースとは質より量では無いだろうか。
上手くやろうとしなくても良い、伝えたい思いがあれば発信すれば良い。
アイドルの魅力が歌唱力や踊りの上手さといった質だけでは無いことを、
私達はもう知っているのだから。