IDOLY PRIDEとは
ABEMAを運営するサイバーエージェントグループ
Sony Music傘下の声優事務所ミュージックレイン
そして多方面に渡るクリエイターマネジメントを手掛けるストレートエッジ
この三社が主導するアイドルを題材としたメディアミックスプロジェクトです。
原案には【ラブライブ!】を手掛けた花田十輝
シリーズ構成にアニメ版アイドルマスター(765及びシンデレラ)に参加した高橋龍也
などこれまでアイドル作品で実績のあるスタッフを揃えています。
プロジェクトの始動自体は2019年ですが、2021年1月に満を持してアニメ放送がスタート、今年中にゲームアプリのリリースも決まっています。
ここまで資金と労力を潤沢に注ぎ込んだ企画はかなり珍しいこともあり、放映前から注目していた作品でした。
あらすじ
関東郊外にある星見市。
「年に一度やってくる流星群の観測に最も適した町」であることからこの名前が付けられた。そんな星見市にある小さな芸能事務所、星見プロダクション。
そこから華々しいデビューを飾ったアイドル・長瀬麻奈は、ライブバトルで連戦連勝を果たし、またたく間にアイドルランキング・VENUSプログラムを駆け上がった。
数年後、星見プロダクションは新たなアイドルを見出すオーディションを開催。
そこへ現れたのが、麻奈を姉に持つ長瀬琴乃と麻奈そっくりの歌声を持つ川咲さくらだった。
ふたりをはじめ、続々とアイドル志望者が集まり、活気づく星見プロダクション。
集まった10人は、寮での共同生活を始める。加えて、麻奈を超えんとするTRINITYAiLEや、麻奈に並々ならぬライバル心を抱くLizNoirが彼女たちの前に立ちふさがり、プライドを胸に競い合う。
麻奈を取り巻く様々な思いが錯綜する中、アイドルたちは最高峰を目指していく。
(公式ホームページより引用)
実力重視のコンテンツとしてアイマスやラブライブとの差別化を狙ったが……
アイドルをテーマにした作品はレッドオーシャンです。
アイドルマスターとラブライブ!に代表される長い歴史と実績を持つコンテンツがひしめき合う中で本作がどのような差別化を狙っているのかとても興味がありました。
本作の最大の特徴は【TrySail】 と【スフィア】といった既に音楽活動をしていた声優ユニットをそのまま起用した上
昭和を代表するアイドル松田聖子の娘にして歌手や俳優としての実績を持つ【神田沙也加】を、作中で伝説的なソロアイドルとされる【長瀬麻奈】役で起用したことです。
CDリリースが早々に行われるなど、プロモーションや劇中における扱いもアイマスやラブライブ!に出てくるライバルユニットとは比較にならない力の入れようでした。
既に歌唱力を認められ一定の成功を収めている彼女たちを前面に押し出しす起用はクオリティの高さで差別化を図る狙いがありありと見てとれました。
この、実力至上主義のアイドル像というのは確かに今までに無い斬新なものでした。
しかし、ここに大きな落とし穴があったように私は感じました。
作品の運命を決定付けたVENUSプログラム
本作ではVENUSプログラムというアイドルの実力をAIで判定してランク付けをするシステムが存在します。
要するに実力さえあれば、事務所の大きさも知名度も関係なく一気にトップアイドルになれるシステムです。
実力至上主義のコンテンツとしてはおあつらえ向きの設定だったのですが、これが思いの外足を引っ張っているように感じました。
そもそもの話、アイドルの魅力や価値は実力にあったのでしょうか?
本当に実力こそが全てなら、アイドルである必要は無いんですよね。
演技なら俳優、躍りならダンサー、歌や演奏ならアーティストといった具合にそれぞれの分野の専門家が既に存在しています。
勿論、歌も躍りもルックスもアイドルとしては欠かせない要素で、その完成度は高いに越したことはありません。
しかしアイドルが人々の心を掴んで離さない理由は、ひた向きさや成長する過程と言った、実力を越えたところにこそあったのでは無いでしょうか。
アイドルの価値は完成度の高さでしかないという打出し方は、差別化には成功したもののアイドルをテーマにした作品としてはあまりにもチープな出来ばえにしてしまいました。
ファンを必要としない歪なアイドル
例えば、仲間と一緒に全国一位を目指す流れはラブライブ!のような部活ものだからこそ活きたたと思います。
プロの事務所を舞台にするなら、もう少しモチベーションの源が何処にあって何故そうなるのか丁寧に描くべきでした。
また、ファンやお客さんよりライバルばかり意識しているのはプロのアイドルとしてどうなのでしょう。
本来アイドルを応援するファンはサッカーチームのサポーターのように一緒にグループを育てて大きくしていくものなんですが……。
なんと言いますか、作中の描写に限らず、アイドリープライドというブランドそのものがずっとこんな雰囲気なんですよね
応援しているファンのことをちゃんと見ているのかなと心配になりました。
最後に
放送前から期待していた作品だけあって、少し辛口な感想になったかもしれません。
と言うのも、作り手側の愛情をほぼ感じることが無かったからなんです。
売りたい作品ではあっても作りたい作品ではなかったのかなと思うと、なんだか悲しい気持ちになる作品でした。