今週のお題「下書き供養」
選択的夫婦別姓が昨今ニュースでも取り上げられるようになっきたのもあり
古代ローマの家族制度はどうなっていたのかなと興味が沸いたので調べてみたのはいいものの
需要ないだろうなと思って封印してました。
今週のテーマが下書き供養ということもだったのでここに上げて供養しておきます。
雑学がてらに、また最近創作をされてるフォロワーが増えてきたのでそんな方の助けになれたら幸いです。
何故ローマは法治国家になったか
家族制度に限らず古代ローマの制度について語る上でまずはローマ法について簡単に触れないといけません。
ローマ法は現代の欧米や日本にも影響を与えている古代ローマの法体系のことです。
その歴史は紀元前449年の十二表法から始まり、紀元後527年に東ローマで即位したユスティニアヌス帝の時代に編纂された「ローマ法大全」の完成を一つの集大成とみなされています。
ローマ法は古代にしては珍しく宗教色の薄い合理的な性格を有していることです。
何故でしょうか?
それは一都市国家に過ぎなかったローマがイタリア半島を統一し地中海の覇権を握るに至る過程で数多の民族、数多の宗教を内包することになったことと大きく関係しています。
現代における宗教間、人種間の対立からも明らかなように
思想や信条、価値観はそれを同じくする者の間でしか共有することが出来ません。
その為、人種、民族、宗教、思想等の違いから生じる対立を平和的に解決する為の手段として
誰しもに平等に適用される法律が必要だということを当時のローマ人は理解していましたのです。
ローマ法における家族
古代ローマの家族法において大きな特徴となるのが非常に強い家父権でした。
家長である男性が妻や子どもに止まらず、子どもの配偶者や孫にまで及ぶ強い支配権を有しており、その権限は父親が生存する限り子どもに移ることがありませんでした。
古代ローマにおいて財産権は家父長である男性に帰属していて
相続においても、法律で定められたルールより遺言による家父長本人の意思が優先されていたことから
法律上「家族」とは家父長である男性一人を指しており、財産だけでなく家族も彼の所有物として扱われているとみなしても良いかもしれません。
こうした家父長の権限については十二表法の頃から明記されており、ローマが早い時期から家父長に強い権限を持たせていたことが分かります。
市民権を与えたり自治を認める寛容な姿勢で多種多様な民族を吸収していったローマが、一方でこうした厳格な家族制度を採用したことは面白いですね
ローマにおける家父長制の背景
家庭内における家父長の絶対的権力性は古代ローマの統治スタイルに酷似していました。
古代ローマにおいては国家の全権が特定の個人に委ねられており
これは帝政期の皇帝は言うまでも無いが、選挙で選ばれ任期も定められていた共和制期の執政官や独裁官にも同じことが当てはまっています。
平時からトップダウンの社会秩序が構築されていたことがローマを地中海の覇権国家へと押し上げる土台となっていました。
そして国家と個人の関係性もこうした社会秩序に飲み込まれることになっていきます。
要するに、個人を家族という単位でまとめ、そこに与えられる権利と義務を家父長に集約させたのです。
ローマにおける家父長権とは課された義務を全うする為に与えられた裁量権のようなもので
家父長は家庭の中では絶対的な権限を有していた一方で社会的責任を一手に引き受けることになります。
例えば家父長に与えられた権限として「身内の犯罪者を被害者に引き渡す権利」というものがある。
これは身内が犯罪を犯した際、罪を犯した本人ではなく家父長である男性が被害者の訴えを聞かなければいけないというものです。
加害行為を行った子弟や奴隷を被害者に引き渡すか、または相応の賠償金を支払うかの判断も家父長が責任をもって判断しなければいけないのです。
また、家父長権の濫用を抑止する役職として戸口調査官や司法官といった役職も存在しており、家父長だからといって好き放題出来ていたとは限らないようです。
最後に
これまで私は家族制度について考える時、男性と女性との違いや大人と子供の違いといった表面的な部分しか見てきませんでしたが
こうしてローマの家族制度を学んでみると、社会の最小単位である個人や家庭をどのように国家と結びつけていたのかという視点が欠かせないことが分かってきました。
現代の視点や価値観から一方的な決めつけをしないよう気を付けながら引き続き様々な書籍や論文を漁っていきたいですね。
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参考文献
WEKO - 拓殖大学 機関リポジトリ
ローマ法における婚姻制度と子の法的地位の関係―欧米における婚外子差別のルーツを求めて―
椎名規子
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 20 (2), 47-81, 2018