気になる作品ほど、期待値が邪魔をする。
このブログでは毎回フラットな目線で、作品の見所や良かった所を紹介します。
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1979年に公開された、監督長谷川和彦、主演沢田研二による怪作、太陽を盗んだ男です。
劇場公開された当時は興行的には振るわなかったものの、一部の映画ファンからはカルト的な人気を誇る本作の魅力を自分なりに紐解いていきたいと思います。
あらすじ
自ら製造した原子爆弾で政府を脅迫する男の孤独な闘いを鋭い風刺とパワフルな演出で描き、現在もカルト的人気を誇る異色のアクション映画。
中学校の冴えない理科教師・城戸は、原子力発電所に侵入してプルトニウムを盗み出し、自宅アパートで苦労の末に原子爆弾の製造に成功。警察に脅迫電話を掛けると、以前バスジャック事件に遭遇した際に知り合った山下警部を交渉相手に指名する。明確な目的も思想も持たない城戸は、テレビの野球中継を試合終了まで放送させるよう要求したり、ラジオ番組を通して次の要求を募集したりと、行き当たりばったりの犯行を続けるが……。
引用元:https://eiga.com/movie/37677/
当時の東京が持つ異様な空気感
まず冒頭から、この映画は“時代の空気”で殴ってくる。
たくさんの生徒が押し込められた教室、灰色にくすんだ街並み。
その街並みはどこか機能的で、余白がない。
画面の向こうに見える東京はある種のディストピアのように見え、
まるで今よりずっと未来の東京を覗き込んでいるような錯覚すら覚える。
この映画には、全編通してどこか“歪み”のようなものが漂っています。
高度成長の熱をまだ残しながら、すでに限界まで膨張してしまった都市。
都心に聳え立つ高層ビルはまさにその象徴のように思えました。
そして、そんな歪みを抱えたまま、それでも前へ進もうとするエネルギーが画面の奥から滲み出てくる。
退廃と成長が同時に存在する、奇妙な時代の熱を感じられるのが、本作の大きな魅力です。
日常と狂気が同居する、静かな異常性
この映画は妙に生活感がある。
日常的な空気の中に静かな狂気がそっと紛れ込んでいて、それがまた見る者を引き付ける。
例えば、主人公の城戸が自宅の一室で核爆弾を製造しながら、缶ビールを飲み、テレビの野球中継に一喜一憂するシーン。
やっていることは国家を揺るがす大犯罪なのに、彼が身に纏う空気は驚くほど牧歌的で、生活の匂いが漂っていました。
そして極めつけは、ラジオ番組に電話をかけ、
“核爆弾を使った脅迫内容をどうするべきか”をリスナーに相談する場面。
あまりにも稚拙で、あまりにも幼い。
しかしその幼さを抱えたまま、彼は世界を揺るがす力を手にしてしまっている。
この「強大な力を持て余す人間」の危うさを描くうえで、
あれ以上に象徴的なシーンはないかもしれません。
『太陽を盗んだ男』の異常性は、こうした“日常の延長線上にある狂気”として静かに積み上がっていく。
狂気を非日常的なものとして描かないからこそ、そこには真に迫るリアリティがあります。
荒唐無稽な中に光るリアリティ とは
本作には、明らかに現実離れした描写がいくつも登場します。
原発のセキュリティは甘すぎるし、そもそもアパートの一室で原爆を作れるわけがない。
警察の捜査は行き当たりばったりで対策も杜撰。
全部上げればキリが無いほどこの映画は酷い。
リアリティも何もあったもんじゃないです。
なのに映画を観ている最中は不思議と気になりませんでした。
リアリティの欠如よりも、続きが気になって仕方が無かったというのもありますが
やはり、沢田研二演じる城戸の“狂気”があまりにも本物だったから、というのが一番の要因でしょう。
先の項目でも述べた通り、彼の行動は幼稚で、稚拙で、どこか子どもの悪ふざけの延長のように見える。
しかし、その幼さを抱えたまま、彼は本当に原爆を作り、
国家を脅迫し、東京を揺るがす力を手にしてしまう。
この「人間の器と手にした力のバランスが完全に崩れている」状態が、
作品全体に奇妙な説得力を与えている。
荒唐無稽な設定がリアルに感じられるのは、
城戸という人物の“危うさ”があまりにも鬼気迫るものがあったからなのです。
圧倒的な画力が生む、忘れられない瞬間の連続
最後に、本作を語るうえで外せないのがワンシーンごとの“画の強さ”です。
皇居前でのバスジャックや城戸が妊婦に変装して国会議事堂へ潜入する場面、
高層ビルから大量の一万円札がばら撒かれるショットに、高速道路で繰り広げられるカーチェイス。
そのどれもが、ゲリラ撮影によって生まれたカットであり今では撮影不可能(と言うか当時でもアウト)なシーンであり、その“無茶”がそのまま画面の迫力として焼き付いています。
今の映画には無い「圧」が画面から伝わってきて、かなり新鮮な映像体験でした。
さいごに
『太陽を盗んだ男』は、物語の奇抜さだけでなく、
その圧倒的な画力によって“忘れられない瞬間”を次々と生み出していく映画です。
見る人によって合う合わないはあると思いますが、個人的には一度は是非見て欲しいです。
それくらい圧倒的な個性を持つ唯一無二な作品でした。
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