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【ハマる!ライトノベル徹底レビュー】 ダークファンタジーを下地にした特攻野郎Aチーム! 「勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録」 

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レーベル:電撃の新文芸
著者:ロケット商会
イラストレーター:めふぃすと
発売年月日:2021年9月

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あらすじ

勇者刑とは、もっとも重大な刑罰である。
大罪を犯し勇者刑に処された者は、勇者としての罰を与えられる。
罰とは、突如として魔王軍を発生させる魔王現象の最前線で、魔物に殺されようとも蘇生され戦い続けなければならないというもの。
数百年戦いを止めぬ狂戦士、史上最悪のコソ泥、詐欺師の政治犯、自称・国王のテロリスト、成功率ゼロの暗殺者など、全員が性格破綻者で構成される懲罰勇者部隊。
彼らのリーダーであり、《女神殺し》の罪で自身も勇者刑に処された元聖騎士団長のザイロ・フォルバーツは、戦の最中に今まで存在を隠されていた《剣の女神》テオリッタと出会い――。
「力を貸してくれ、これから俺たちは魔王を倒す」
「その意気です。勝利の暁には頭をなでてくださいね」
二人が契約を交わすとき、絶望に覆われた世界を変える儚くも熾烈な英雄の物語が幕を開ける。<<

魅力① 斬新な設定

 一般的に勇者は人類の英雄として扱われ、それに選ばれることはこの上ない栄誉として描かれる事が多い。しかし、本作では魔王との終わりなき戦いを強いられる死罪より重い刑罰になっているのが大きな特徴であり、作品のフックになっている。
 

魅力②個性豊かな勇者達が揃う懲罰勇者9004隊

 集められた勇者達は元犯罪者なだけあって一癖も二癖もある面々が揃っている。そんな個性豊かなキャラクターも本作の魅力の一つだが、ここでは懲罰勇者9004隊が組織としてどんな印象を与えているかについて語っていきたい。
 彼等は一言で例えると地球防衛軍だ。ウルトラマンに出てくる科学特捜隊のようなものをイメージすると良い。
 一人一人が得意分野を持つ戦闘のプロ。しかし彼等は決してチート級の力を持つスーパーヒーローではない。
 そのため魔王という圧倒的な強敵に対して、単純な「力押し」ではなく、知恵と工夫を駆使して戦う。この点が本作の大きな魅力となっている。
 ジャンルとしてはダークファンタジーな本作に泥臭さやリアリティか加味され、物語の裏で蠢く陰謀や伏線として散りばめられた謎を真に迫るものにしている。

魅力③チート級な力を持つが全能感を一切感じさせない女神達

 本作を語るには女神についても触れなくてはならないだろう。
 彼女たちは古代文明が魔王に対抗する為に作った決戦兵器だ。
 これだけ聞くと良くあるチートキャラという印象だが、実際は強力な力を持つが故に使い所が難しい兵器として描かれており、この使い勝手の切り札を武器にどのようにして魔王を倒すのかが本作の見所になっている。
 

総評:タイトル詐欺とまでは言わないがミスマッチを生みそうな作品

 本作は勇者という単語が持つイメージとは真逆の作品だ。
 勇者と言ってもその実態は特攻野郎Aチームよろしく曲者揃いの独立愚連隊という様相で人類側の切り札である女神も様々な制約が課せられその力を十全に振るう場面はそこまで多くない。
 人類が知恵と工夫で強大の敵に挑む様はファンタジーを下地にした作品とは思えないほど泥臭くリアリティを感じさせるが、裏を返せば爽快感に欠ける。
 事前情報を全く入れずに本作品を手に取った人の中には「思ってたのと違う」と感じた人も少なくないかもしれないし、逆にこういう作品が好きなのにタイトルだけ見て食わず嫌いしてる人もいる気がする。
 アニメ化も決定しているので、これを機に独特な魅力を持つ本作品がより多くの人に届くことを願って止まない。

さいごに

 本作品の魅力をまとめると
✅️『勇者刑』をはじめとした斬新な設定
✅ 癖のあるキャラが揃った個性的なチーム「懲罰勇者9004隊」
✅ 圧倒的な強敵に知恵と工夫で挑む人間ドラマ
✅ チートキャラなのに万能ではない女神たちから醸し出るリアルな戦略兵器感
……と言ったところでしょうか。

「俺TUEEEE系には飽きた…もっと泥臭く知略を使った戦いが見たい!」 

「個性豊かなキャラたちの掛け合いを楽しみたい!」
 
「設定がしっかり作り込まれたダークファンタジーが読みたい!」

「無双系じゃないチートキャラの使い方が気になる!」

 そんなただの異世界ファンタジーじゃ物足りない!と言った方には是非ともオススメな作品になっています。
 気になる方はぜひ一度本作品を手にとってみてください。