今この記事を読んでいるあなたは多少なりともローマ史に興味を持っていて
自分なりにあれこれ調べていくうちに本書の存在を知り
これから読むかどうか検討しているのではないかと思います。
この記事はそんな歴史好きで読書家なあなたに少しでもローマ建国史の魅力が伝わればという思いで書きました。
ローマ建国史を書いたリヴィウスとはどんな人物か
ティトゥス・リヴィウス(リウィウスとも)が活躍したのは紀元前1世紀後半のローマです。
共和制から帝政へと移り行く激動の時代を生き抜いた人物であり、初代皇帝アウグストゥスの側近として彼の孫であり後に第四代皇帝となるクラウディウスの教育に携わったこと、これと言った公職には就かずその一生の殆どを執筆活動に費やしたことなどは分かっているみたいですが、その生涯の殆どは謎に満ちています。
そんな彼の人となりを知る手がかりとしても本書は大きな価値を持っています。
まず、本書を執筆するに当たって書かれた序言からは、彼が建国神話をファンタジーだと捉えていながら、そのような神話を国家のルーツに置くことに一定の理解を示しています。
とかく現代の視点から見たとき、紀元前の世界は歴史と神話とが交錯するおとぎ話のような世界で、そこに生きてる人々もまたおとぎ話の登場人物であるかのように捉えてしまいがちですが
ティトゥス・リヴィウスのこの価値観は現代人の感覚に非常に近く、紀元前の世界にこうした賢人がいたことを改めて実感させてくれます。
また彼は、彼は同じ序言の中で執筆当時の紀元前1世紀末のローマが道徳的な腐敗に陥っていることを嘆いており、その後の本文中からも、彼が共和制期のローマを理想の国家として捉えていることが伺えます。
このローマ建国史は史料批判に欠けて、正確性に乏しいと言う批判もされて来ましたが
こうした彼の思想を踏まえると、彼はあえて史料の正確さには目を瞑り、そうした史料が残されてる事に意味を見出だしたのかもしれません。
要するに、リヴィウスが【歴史】を語る上で重視したのは、真実ではなく、先人が当時の出来事を後世に伝える上でどのような物語を作ったかであり
その理由やそこに込められた意図も含めて、残された史料に意味や意義を見出だし
先人が残した物語をありのままに後世に伝えること
それこそがリヴィウスのしたかったことではないでしょうか。
これはあくまで自分の想像です。
とは言え、歴史とは余白を想像で補って楽しむものです。
これから本書に触れるあなたも、リヴィウスが残した意思に思いを馳せながら読んで欲しいと思います。
ローマ建国史とはどういう書物か
元々ローマ建国史は142巻で構成されており、ローマ建国からリヴィウスが生きていた紀元前1世紀末に至るまでの歴史が記されていました。
しかし、現在は1~10巻及び21~45巻までしか現存していません。
12~13世紀まで完全な形で残っていたとされていますが、当時のカトリック教会にとって都合の悪い内容が含まれていたのかもしれません。
現存してる部分だけで言うと、ローマ建国から第三次マケドニア戦争まででその内第一次ポエニ戦争の辺りがごっそり抜けてる形になっています。
このように大部分が失われているにも関わらず、このローマ建国史は第一線級の史料として現在に至るまで大きな影響を与えています。
ローマ建国史に影響を受けた人物で最も有名な人と言えば、【君主論】でおなじみのニッコロ・マキャベリではないでしょうか。
彼も、リヴィウス同様に共和制期のローマを非常に高く評価して、後に本書の事例を基に自身の政治思想を展開していく【政略論】(ローマ史論とも)を執筆しています。
マキャベリの例に限らず、このローマ建国史は歴史書として、そしてラテン文学の傑作として今日まで西欧では広く親しまれているようです。
それはまるで、日本人が古事記や日本書紀、或いは神話、歴史書の類いではありませんが源氏物語や万葉集に触れることで、自分達のルーツやアイデンティティを見つめ直すことに似ている気がします。
グローバル化が叫ばれて久しいですが、異なる文化や習慣を持つ人達と相互に分かりあう上で、文化の土台を作ってきた書物に触れることも今の時代必要なのでは無いかと自分なんかは思うのです。
ローマ建国史を手に取り読書を越えた体験を
こうした大昔に書かれた書物を読むことで得られるのは知識だけではありません。
書物を通して、遠い過去の時代に生きていた筆者の価値観や思いに触れること
そんな時間を越えた交流は、もはや読書を越えた体験となってあなたの心を豊かにするはずです。
この史料に直接触れることでしか得られない感覚としか言えないんですがこの感覚は人によっては本当に病み付きになります。
もし、本書に興味を持った方がいらっしゃいましたら是非手にとって読んで見て欲しいです。
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読み易さで言うと【抄訳】になりますが、こちらがお勧めです。